お金が足りない
第一次世界大戦のとき、オーストリアは、他の国と同様に、戦争でたくさんのお金を使ってしまいました。
- 武器を作る
- 兵士を訓練する
- 食料を用意する
- 軍隊を移動させる
こうしたことに、大金が必要でした。
しかし、税金だけでは足りません。
そこで政府は、新しくお金を刷りました。

お金が増えた
お金が増えたことで、オーストリアは、戦争に必要なお金を用意することができました。
作ったお金の主な使い道は
- 軍事費
- 兵士の給与
- 武器や弾薬の調達
- 食料の調達
- 行政機関の運営費
- 財政赤字の補填
などです。
お金が増えて困った
しかし、お金が増えたことで、困ったことが起きました。
買い物できる量が減ったのです。

たとえば、昨日はパンを1個買えたお金で、今日は半分しか買えない、というようなことが起こったのです。
これを インフレ といいます。
お金が増えたことで、お金の価値が下がり始めたのです。
価値が下がったので、買い物できる量が減りました。
インフレとは?
インフレになると、お店の商品の値段がどんどん上がっていきます。
なぜそんなことが起きるのでしょうか?
それは、お金が増えたのに、商品や食料の量はそれほど増えていないからです。
例えば、世の中に、一つのパン屋しか存在しないとします。
そして、流通してるお金が千円だけだったとします。

世の中に流通してるお金が千円だけなら、パンの値段は100円くらいになるでしょう。
しかし、インフレになると、世の中のお金が増えます。

流通してるお金が増えると、商品の値段が高くなるのです。
実際には、こんな単純な計算で値段が決まる訳ではないですが、イメージしやすいかな、と思って紹介しました。
ハイエクが20代だった1920年代初頭には、物価が猛烈な勢いで上昇しました。
1914年から1924年までで見ると、物価は約14,000倍にまで上昇しました。
1914年にパン1個が100円だったとすると、1924年には140万円になったような感覚です。

さらに悪いことが起きる
インフレでパンの値段が上がって困りました。
しかし、さらに悪いことが起きます。
投資が増えすぎてしまったのです。
投資とは、例えば、パン屋を作ることです。
世の中のお金が増えても、パンの量は急には増えません。

こうしてインフレになっているわけです。
それなら、パン屋をもっと増やせばいいのではないか?
そう考えて、パン屋をつくる人が増えます。

パンが少なくて、お金が多いとき、インフレになります。
それなら、パン屋が増えたら、インフレが解決しそうです。
パン屋が増えた場合を考えて行きます。

ここで重要なのは、人々がパンをたくさん食べるようになったわけではないということです。
お金があるだけで、パンを買いたい人が増えたわけではない。
- 人口は増えていない
- お客さんが足りない
- 商品が余る
ということが起こります。

- パン屋が増えすぎる
- 売り上げが伸びない
- 利益が減る
- 閉店する店が出る
ハイエクは「景気がいいと思って工場や店を増やしたけれど、本当は必要なかった」ということもありえると考えています。
必要のないほど作ってしまえば、お店が潰れます。
そして、経済が本来の姿に戻るのです。
ハイエクは、不況の原因を「景気が悪いから」ではなく、「その前に無理な投資が行われたから」だと考えるようになります。
つまり、「最初から、お店を作りすぎたことが問題だったんだ」と考えました。

つまり、ハイエクが区別したかったのは人々が本当に必要としているからパン屋が増えるのか、それとも、お金が増えたことで景気が良くなったように見えるだけなのかという点でした。
どうすればいいのか?
ハイエクはどうやって経済を立て直していけばいいと考えたのでしょうか?
「こうするべき」という話をあまりしてません。
「これはしてはいけない」という話をしています。
ハイエクは、不況になったときに、「政府が無理に景気をよくしようとするべきではない」と考えました。
「お金がなくて困っているなら、お金を刷ればいい」というのが世界の常識です。
実際、多くの経済学者は、お金が増えることによって経済活動が活発になることを認めています。
しかし、ハイエクは、お金を増やしすぎるのは良くないと考えました。

ハイエクは、店や工場が潰れることを「悪いこと」とは考えませんでした。
むしろ、「本当に必要な仕事や産業に、人やお金が移動している」と考えました。
例えば、戦争が終わったことで、武器工場が儲からなくなった、ということがあったかもしれません。


もし政府が、「潰れそうな武器工場を全部助けよう」とすると、問題が長引いていたかもしれません。
潰れるのは、一時的なことです。
景気が悪くなって、一時的にはいろんな店や工場が潰れるかもしれません。
しかし、人やお金が別の場所に移動するだけです。
その時期を経て、だんだん経済が回復するというのが、ハイエクの考えです。
