マネタリズムは、ケインズ学派を批判した学派です。
マネタリズムがどうして生まれたのか?
時代背景を見ていきます。
マネタリズムが生まれる前の時代
ケインズ経済学の登場
まず、1930年代、アメリカで、世界恐慌がおこりました。
世界恐慌とは、不景気のことです。
でも、不景気より、さらに深刻な状態です。
世界恐慌が起きた当時は、たくさんの人が失業してしまい、どうにか景気を立て直す必要がありました。

そこで登場したのが、ケインズ経済学です。
ケインズは、公共事業などの政府による市場への介入をするべきだと考えました。
まず、公共事業とは、橋や道路などを作ることで、失業者に働く場所を与えることです。
失業者は、給料を受け取ると、お金をすぐに使います。
彼らが買い物をしてくれることで、経済が回ります。

ケインズは、失業者を救済することで、国全体を良くしようとしました。
ケインズが、公共事業をオススメした理由は、景気を良くするために、「有効需要」を増やそうとしたからです。
有効需要とは、「欲しい」という気持ちと、お金が両方あることです。

当時は、貧しい人はお金がなくて、買い物ができない状態にありました。
つまり、欲しいという気持ちあるのに、「買うためのお金がない」ということが問題だったのです。
そのため、ケインズは、有効需要を増やすべきだと考えました。
言い換えると、貧しい人々がお金を手を得ることが必要だと考えたのです。
有効需要がない状態では、貧しい人は、お腹が空いても、お金がないので、買い物をしません。
しかし、そんな貧しい人に、政府がお金を与えれば、彼らは買い物をします。
買い物をする人が増えたら、経済が回り始めます。
お金を与えるために、失業者には、仕事を与えれば良いと、ケインズは考えました。

お金持ちの人がさらにお金を稼いでも、お金持ちは貯金をしてしまって、使ってくれません。
しかし、貧しい人はすぐにお金を使います。
だから、貧しい人の有効需要が増えた方が、経済が回るというわけです。
失業者に仕事を与えれば、有効需要が増えるので、買い物をする人が増えて、景気が良くなると、ケインズは考えました。
だから「失業者に仕事を与えるべきだ」と主張しました。

政府が公共事業を行うことで、労働者を雇えば、その労働者は給料をもらいます。
だから、政府が介入した方が、有効需要が増やせるので、景気が良くなるのです。
ケインズ経済学の結果
結果は、どうだったのかというと
ケインズのおかげで、物価を上げることは、成功しました。
物価が上がったということは、商品が高い値段でも売れるようになったということです。
モノが高く売れれば、お店がさらに儲かるので、お店で働いてる人の給料が増えるはずです。

しかし、ここで、新しい問題が起きました。
働いている人の給料が上がらなかったのです。
給料が上がらなかった理由は、オイルショックによる経済の停滞でした。
ちょうどこの時期に中東で戦争があり、石油の値段が上がってしまったので、経済があまり成長しなくなってしまいました。

つまり、不況(低成長)なのに、物価は上がっていくという状態になりました。
この状態を、スタグフレーションといいます。
物価が上がるということは、お財布から出ていくお金が多いということです。
一方で、給料が上がらないと言うことは、お財布に入ってくるお金が少ないということです。
この状況が続くと、国民のお財布の中のお金がどんどん減るので、ピンチです。

ケインズのおかげで、物価は上がりました。
しかし、今度は、インフレという問題に直面しました。
ケインズ経済学のメリットは、失業者を減らせることです。
一方で、デメリットは、インフレになってしまうことです。
インフレがなぜデメリットなのかというと、モノの値段が上がり続けてしまうからです。
インフレは、買い物をする人にとって、負担になってしまうのです。

マネタリズムの登場
ここで、マネタリズムの登場です。

当時の経済問題は、インフレです。
マネタリストは、「インフレになってしまうのは良くない」と考えました。
そのため、マネタリズムでは、「どうやったら、インフレにならないですむか」ということを考えていきます。

インフレの原因は、ケインズ政策が裁量的に行動しているからだと、彼らは考えました。
ケインズは、国のお金を増やすことで、経済を回そうとしました。
しかし、やり方が裁量的でした。

「裁量的」というのは「政府が当てずっぽうにやっている」ということです。
国のお金を増やすのは良いのですが、増やしすぎてしまったので、インフレになってしまいました。

ケインズのおかげで国にお金があふれました。
みんなが、ちょこっと、お金持ちになりました。
しかし、やりすぎたため、インフレになってしまいました。
フリードマンは、政府による裁量的な行動は、するべきではないと考えます。
フリードマンの考えを言い換えると、失業者がいても、政府が仕事を与えなくていいということです。
市場のことは「神の見えざる手」に委ねるべきであり、政府はヒーローになる必要はないのです。
たしかに、世の中のお金を増やせば、失業者を(一時的に)減らすことができます。
しかし、世の中のお金の量を増やすと、その分、物価が上昇し、インフレにしてしまいます。
インフレになれば、モノの値段が上がってしまい、「お店にモノはあるのに、値段が高くて誰も買えない」という状態になってしまうかもしれません。
インフレにしないようにするためには、失業の問題は、政府は関わらない方がいいのです。
フリードマンは、そのように考えました。
