ケインズは、貯蓄は美徳ではないと考えました。
なぜなのでしょうか。
詳しく見ていきます。
古典派の考え方
スミスやピグーなどの古典派経済学者は、「貯蓄は美徳だ」「節約が資本を増やして経済を成長させる」と考えていました。

ケインズの考え方
一方、ケインズはそう考えませんでした。
不況のときに皆が節約してお金を使わなくなると、社会全体の消費が減り、収入も減ってしまうからです。
結果として、「みんなが貯金しても、社会全体の貯金は増えない」という不思議な現象が起こります。
これをケインズは「貯蓄のパラドックス」と呼びました。

ケインズは、景気が悪いのは、お金持ちが貯金をしているからだと考えました。
当時のイギリスでは、多くの大企業で「所有(株主)と経営(経営陣)」が分離していて、株主は利子収入だけを得る“利子生活者”になっていました。
たくさんお金を持っていても、ほとんど使わずに貯めこんでしまっていたのです。
買い物をしないで、貯金ばかりする金持ちが多いと、お店が儲かりません。
だから、景気がよくならないのです。

そのためケインズは、この問題の解決策を考えました。
解決策
ケインズが考えた解決策は、貧富の格差を是正することです。
なぜなら、お金持ちは、お金を手に入れても、貯金するだけで、経済を回してくれませんが、貧しい人は、お金を手に入れると、すぐに使うからです。
これを「消費性向が高い」と言います。

貧しい人のほうが、消費性向が高くて、経済を回してくれるので、貧しい人ほど、お金を得るべきなのです。
そのため、ケインズは、累進課税や財政政策などを行うことで、貧富の格差を是正するべきだと、主張しました。
