ケインズは、『雇用・利子および貨幣の一般理論』の中で、企業は期待に基づいて投資を決めると述べています。
これは、どういう意味でしょうか?
見ていきます。
期待に基づいて投資を決める
未来を想像することを「期待」と言います。
会社の人は「どれくらい売れそうかな?」想像しながら、設備投資をします。
設備投資とは、会社が、新しい工場をつくる、機械を買うなど「未来のためにお金を使うこと」です。
「設備投資」は、「投資」と呼ばれることのほうが多いです。
ケインズは、「期待は投資を決める」と考えました。
つまり、「どれくらい売れそうかな?」想像しながら、設備投資をするということです。

そして、投資を通じて生産と雇用が決まると考えました。

投資は生産と雇用を決める
会社の人は「どれくらい売れそうかな?」想像しながら、パン工場をつくるかどうか決めます。
パンがたくさん売れるだろうと考えれば、新しくパン工場を作ります。
「この工場を建てれば十分利益が出る」と期待しているかどうかで、判断が変わるのです。
「需要が伸びそうにない」と考えれば投資しません。
また、投資が増えると、景気が良くなっていきます。

例えば、パン屋さんが投資を増やすと建物への注文が増えて、建築会社がの生産と雇用が増えます。
さらに、パン屋でも、生産と雇用が増えます。
投資は景気全体を押し上げる力を持っているのです。

パンがたくさん売れると想像すれば、きっと忙しくなるだろうと考えるので、人をたくさん雇います。
一方で、
パンがあまり売れていなくて、きっと売れ残るだろうと想像すれば
「じゃあ、あらかじめ作る量を減らしておこう」
と考えます。
その場合は、働く人がいっぱいいても暇になってしまいます。
そのため、お客さんがあまり来ないだろうなぁと想像してる時は、従業員の数を減らします。
このように、期待は投資を決め、投資が生産と雇用を決めます。
期待と投資
また、投資は、将来の利益への期待によって決まると考えました。

「来年は需要が伸びそうだ」と感じるかどうかで、行動が変わるのです。
「期待」とは予想
生産量や雇用は、「いま売れているかどうか」ではなく、「これからも売れるかどうか」によって決まります。
例えば、今年はパンが100個売れたとします。
しかし、村人が減っている場合、来年は、パンが売れる数が減るかもしれません。

今までどれだけ売れたか?だけでなく
これからどれだけ売れそうか?ということを考えながら、パンを作る量を決めるのです。
つまり「売れる分しか作らない」ということです。
景気をよくするために
ケインズは、景気を良くするためには、将来は景気が良くなるだろうという楽観的な期待が必要だと考えています。
パン屋さんは、いつもは数字を見ながら行動します。
しかし、時には「勢い」が大事なのです。

これから景気が良くなるだろうという気持ちがあれば、買い物する人が増えて、本当に景気が良くなります。
①「将来、景気が良くなるだろうなぁ」と予想する
②新しくお店を開く
③建設会社が儲かる
④お金が回って景気が良くなる
だから、期待は大事です。

楽観的な人が多いと、だんだん景気はよくなっていきます。
一方で、景気が悪くなるかもしれないというムードが広がると、一気に景気は悪くなります。
みんな根拠のない「周りの空気」に影響を受けてしまいます。
その際、不安にかられた人々は、お金を全然使わなくなるのです。
人が、根拠のない不安に駆られるのは、過去のデータだけでは、未来は予測できないからです。
想像はできるけど、「安定した未来がくる」と断言はできないのです。

人間は未来が分からないと、その空白を想像で埋めようとします。
不安が広がると、人々は景気が悪くなる未来を想像するので、結果的に景気が悪くなります。
- 工場を作らない。
- 店員を増やさない。
- 仕入れを減らす。
すると、設備メーカーや小麦屋の売上も減ります。そこで働く人の収入も減り、さらに買い物が減ります。
つまり、「景気が悪くなる」という期待が実際に景気を悪くすることがあるのです。
すぐに回復できない
一度不安になるとすぐ戻りません。
在庫が余っているからです。
そのため、回復はゆっくりです。
実を言うと、古典派は「在庫がたくさんあるなら、値下げすればいいじゃん」と考えました。

しかし、ケインズは、違う考え方をしています。
会社というのは「安く売るくらいなら、生産を減らそう、従業員を減らそう」と考えるだろうと主張しました。

在庫処分のための叩き売りをしてるときは、新しく人を雇う余裕はありません。
在庫処分が終わってやっと、目に見えて回復が感じられるようになるのです。
景気は気分で動く
ケインズの意見では「景気は人の気分の波で動く」と考えられています。
ここでいう「気分」は
- 将来への楽観や悲観
- 自信があるか、不安か
- 「今なら投資しても大丈夫だ」という感覚
といった将来への期待のことです。
景気を良くするためには、人の気分を上げることが、意外と大切です。
人々が「これから景気が良くなりそうだ」と安心して思えることで、お金が回るようになるのです。
ケインズの考え
ケインズは、失業者を減らそうと頑張った人です。
失業してる人を減らすには、将来は景気が良くなろうだろうと言う楽観的な期待が必要だと考えていました。
そして、資本主義経済では、安心感を復活させることがいちばんコントロールしづらいとも、考えていました。

