財政政策で100ドルを使うとして、その100ドルが新しく刷ったものなのか、国債を発行したものなのか、どちらなのかで、話が変わると、フリードマンは言います。
フリードマンは、財政政策に必要なお金を作るために国債を発行してしまうと、景気を良くすることができないと考えました。
詳しく見ていきます。
フリードマンの意見
ケインズのいう財政政策では、政府が投じる100ドルをどこで手に入れるかが説明されていない。ケインズの例に従う限り、政府が100ドル紙幣を新しく刷っても、誰かから借りても、結果は同じと言うことになる。だが、実際には、どちらの手段を取るかによって、結果は明らかに違ってくるはずだ。
『資本主義と自由』フリードマン
今回は、フリードマンの『資本主義と自由』に出てくる上記の文に注目します。
景気対策
ケインズは、景気を良くするために、政府がお金を使うべきだと主張しました。
しかし、フリードマンは、政府がお金を使うにしても、そのお金をどこから調達するかで話が変わると主張しました。

資金調達の方法
資金調整の方法は二つあります。
一つ目は、新しくお金を刷ることです。
二つ目は、国債を発行してお金を借りることです。
お金を刷る場合
新しくお金を刷った場合は、国のお金の量は増えます。
このパターンは、景気を良くする可能性があります。
国債を発行して借りた場合
次に、国債を発行した場合についてです。
国債を発行して、それを国民に買ってもらいます。
この場合は、国のお金の量は増えません。
お金の持ち主が国民から政府に移るだけです。
そのお金を使って、財政政策をして、国民の手持ちのお金を増やしても、お金の所有者が変わるだけです。
これをフリードマンは「右手からもらったお金を、左手で誰かにあげてるだけだ」と言いました。
このパターンでは景気は良くならないと、フリードマンはいいます。

国債を発行すると景気が良くならない理由
国債を発行すると景気が良くならない理由は、民間の投資が減るからです。
政府が借金を増やして支出を増やすと
→国債がたくさん発行される。
→国債を買ってもらうために金利を引き上げる必要がある。
→国債の金利が上がると、銀行の金利も上がる
→銀行の金利が上がると、民間が借金しにくくなる。
→民間の設備投資が減る
このように政府の支出が増えても、その分、民間の支出が減るので、景気は良くなりません。
国債を買ってもらうために金利を引き上げる必要があるのはなぜ?
国債を発行するのは政府です。
政府は、お金を手に入れるために国債を発行して、銀行に売ります。
「売る」と言いましたが、実際には、銀行からお金を借ります。
お金をしてくれたら、利子をつけて返します、という約束が国債です。
銀行は、金利が高い方が嬉しいです。
国債の金利を高くすれば、国債を買ってくれる銀行が増えます。
だから、政府は国債の金利を高くします。

国債の金利が上がると、銀行の金利も上がるのはなぜ
銀行は、お金を貸して、利子で儲けています。
お金を貸す相手は2つあります。
国債か、企業かです。
この二つは、銀行のお金を奪い合う関係にあります。

銀行は、どのように選ぶのかというと、儲かる方にお金を貸します。
企業にお金を貸した方が儲かるなら、企業にお金を貸します。
しかし、銀行にとって、企業にお金を貸すのは、ちょっと怖いです。
企業が潰れて、貸したお金が返ってこないことがあるからです。

一方で、国債にお金を使うのは、安全です。
日本が潰れない限り、必ず貸したお金が返ってくるからです。

銀行は、儲かる方にお金を使いますが、国債か、企業かでいうと、国債にお金を使う方が安心できます。
そのため、国債の金利が高いときは、国債を買います。
企業が「国債の金利よりも高い金利を払います」と言ってこない限りは、企業にお金を貸したくないのです。
国債にお金を使った方が、高い金利が手に入る時は、銀行は、企業にお金を貸すときも高い金利を要求します。

銀行が貸出先を選ぶとき、国債の金利が高いと「わざわざリスクのある企業にお金を貸さなくても、国債を買う方がおトクだ」と考えます。
国債の金利が高い時は、銀行は、企業にお金を貸す時の金利も高くします。
これが、国債の金利が上がることで、銀行の金利も上がる仕組みです。
まとめ
政府がお金を使うとき
方法 | 効果 |
紙幣を刷る(金融政策) | お金の量が増え、景気を良くする効果がある |
国債で借りる(財政政策) | 金利が上がれば、民間投資が減り、効果がなくなる |