アダムスミスは、“自由な経済”の考え方を広めた人です。
国民の富を増やすには、どうしたらいいのか?ということを考え『国富論』という本を書きました。
どんな考え方を持っていたのかみていきます。

利己心について
アダムスミスは、『国富論』という本で「利己心」という言葉を使っています。
利己心とは、「自分のことを大事に思って、自分が得をするように頑張ろうとする気持ち」のことです。
つまり、自分の利益を大切にすることです。
この言葉は、「自己中心的」と言い換えられる時もあります。

利己的って、悪いことじゃないの?
一般的には、利己的とは、悪いことだと言われています。
しかしアダムスミスは、利己的な人の行動も、知らず知らずのうちに社会みんなのためになることもあると考えました。
なぜなら、利己的な人は、勝つために努力をするからです。

利己的な人は、競争に負けないように、努力をします。
努力をするので、新しい商品やより便利な商品を生み出すのです。

働く人は、基本的にはお金を稼ぐために働いています。
お金を稼ぎたいという利己的な理由で、人は働くのです。
しかし、人の利己的な行動が、誰かのためになることもあります。

さらに、みんなが利己的だと、国が潤います。
なぜなら、国民一人ひとりが潤えば、国全体が潤うからです。
そのため、人々が利己心を持っていても、みんなが自分のために一生懸命に働くので、結果的に、国を豊かにするのです。

それぞれの人の利己心を生かすためには、自由が大切だと、アダムスミスは考えました。
政府の介入について
アダム・スミスは、基本的に経済活動には政府があまり口を出さないほうがよいと考えていました。
アダムスミスが生きていた時代は、まだ個人の自由や人権が、ちゃんと守られていたわけではありませんでした。
政府が市民の会社の邪魔をしたり、一部の商人だけが儲かるように仕組んだりしていたのです。
そこで、アダムスミスは、経済を発展させるためには、市民が競争できるようにすることが必要だと、主張しました。
国民同士で競争してもらうと、国民は、より良い商品をどんどん作ってくれます。
そして、国民が競争をするためには、国家が経済活動に介入せずに、国民に自由にお金稼ぎをさせる方がいいのです。
そのため、アダムスミスは、経済を発展させるためには、市民の自由にしてあげることが大切だと言いました。
自由競争
また、アダムスミスは、自由競争が大切だと主張しました。
自由競争とは、政府から介入されずに競争することです。
自由競争では、競争相手がいます。

自由競争のメリットは、お店の商品が安くなることです。

値段が下がればお客さんは、嬉しいです。
値下げ競争が起きれば、お客さんは、物を安く買えます。

企業は競争に勝つために努力をして、安く商品を提供します。
また、努力をして、より良い商品を作ります。
企業どうしが競争をすることで、世の中に、良い商品がどんどん生まれるのです。
そのため、アダムスミスは、自由は大切だと考えました。
独占
アダムスミスは、「独占」という言葉を「自由」の対義語のように使っています。
「独占」とは、一部の商人が、利益を独り占めすることです。
つまり、競争相手がいない状態です。

アダムスミスは、独占は良くないと考えました。
独占というのは、ライバルを排除した状態です。
競争相手がいないので、自分の利益が脅かされる心配がありません。

独占が始まるきっかけの一つは、商人と国の役人が結託することです。
アダム・スミスの時代には、独占が起きやすかった理由のひとつに、「商人と国の役人が結託する」ことがありました。
これはどういうことかというと、商人や大きな会社が、自分たちの利益を守るために国の役人と仲良くなり、法律や制度を利用して競争相手を締め出したり、特別な権利をもらったりしていたのです。
たとえば、ある商人が国の役人にお願いして「この商品はうちだけが売っていい」と独占的な許可をもらうと、ほかの人は商売ができなくなってしまいます。
スミスはこうした商人と国の役人の結びつきを批判し、「本当の競争がなくなってしまうと、社会全体の利益が損なわれる」と考えました。
だからこそ、スミスは市場の自由な競争を大切にし、政府の介入も公平であるべきだと主張したのです。

アダムスミスが批判したのは、政府が作り出す独占です。
アダムスミスは、独占をなくしたいので「市場を自由に」と主張しました。

独占のデメリットは、商品の値段が高くなることです。
例えば、ダイヤモンドを独占するなら、以下のやり方で、値段を高くすることができます。

お店にあるダイヤモンドの数を減らすと、奪い合いが起きます。
奪い合いが起きると、値段を高くすることができるのです。

独占のデメリットはそれだけではありません。
独占があると、他の企業が育たなくなります。
他の企業の中には、優秀な企業もあるかもしれません。
優秀な企業は、お客さんに、良い商品を提供する可能性があります。
しかし、独占があると、他の企業が育たないのです。

さらに、もう一つデメリットがあります。
それは、商人たちを、怠け者にさせることです。
独占があると、商人が努力をしなくなるのです。

商人たちは、「独占」によって、楽に利益を得られるようになります。
すると、自分のスキルを磨く努力をしなくなるのです。
背景
最後に、アダムスミスが、自由を大切にしたいと考えた背景についてみていきます。
アダムスミスが生きていた時代は、王様が統治する時代から、市民の自由が大切にされる時代へ移り変わっていた時期でした。
商工業が成長したため、市民は、自由な経済活動をしたいと考えるようになりました。
そして、市民にとって王様の絶対権力が邪魔になってきたのです。

このような時代だったため、アダムスミスは、市民の自由が制限されてる状況が良くないと考えました。
まとめ

アダムスミスは、「利己心」をエネルギーにして、頑張る人を応援したいと考えています。
国民を自由にさせると、国民は、利己心を持って努力をします。
そして、努力をする人たちは、国を豊かにしてくれるので、国民には、自由にやらせた方がいいのです。
