サッチャーは、1979〜90年にイギリス首相を務めました。
彼女は、良い結果も悪い結果も招きました。
どのような政治をしていたのか、見ていきます。
小さな政府をめざした
まず、サッチャー政権は小さな政府を目指しました。
大きな政府が「政府が弱者を救済するべき」と考えるのに対して
小さな政府は「競争についていけない人には厳しいく対応しよう」という考え方が強めです。
サッチャー政権でも、「努力した人や会社が成功するのは自然なこと。甘えは許さない」という考え方がありました。
極端な言い方をすれば「努力すれば、成功するはずで、成功してない人は努力をしてない」といった思想があったのかもしれません。
自由な競争
サッチャー政権は、自由な競争を大事にしました。
国民が「もっと豊かになりたい」と思えば、一生懸命に働き、社会全体の力が強くなると考えたのです。
そのため政府が細かく支えるよりも、できるだけ自由に競争できる仕組みを重視しました。
いわゆる「小さな政府」で、国の成長を優先し、ときにはお金持ちに有利な制度を整えることで経済を動かそうとしたのです。

さらに、労働組合いを弱めました。
当時のイギリスでは労働組合(働く人たちがつくる団体)の力がとても強く、ストライキが多くありました。
サッチャーさんは「国全体のために、組合の力を弱めなければ」と考えて、規制をかけました。
競争が活発になるように
サッチャー政権は、政府の介入はやめるべきだと考えていました。
政府の介入をやめることのメリットは、競争が活発になることです。
政府が介入をしてこなくなると、企業は活発に競争できるようになります。

これを、受験で喩えてみます。
通常、受験は、点数が低い人は不合格となります。
もし、点数が低い人も、合格できるようになってしまったら、まともに勉強する気になれないと思います。
「できない人」が優遇される世界では、競争のモチベーションが下がるのです。

サッチャーは、助けを求めてばかりの弱虫が好きではありません。
成果を出した人間がいい思いをする世の中を作りたかったのです。
国民が、必死に競争して、努力することが良い状態だと考えました。
そのため、「弱者を救うことは、政府の役割ではない」と考えました。

また、企業が努力すれば、お客さんにとっても、メリットがあります。
企業が、いろんな新商品を作れば、お客さんは、たくさんの選択肢のなかから、商品を選ぶことができます。
企業同士が競争をすれば、死に物狂いで、努力します。
企業の努力の結果、商品は、より安くなり、より質がよくなります。
自由競争があることで、より素晴らしい商品が作られるのです。
政府の介入を減らせば、企業はどんどん競争をするので、お客さんの買い物の選択肢が広がります。
これが、小さな政府のメリットです。

また、小さな政府では、高い税金を嫌います。
政府は弱者を助ける必要がないため、政府の人は、少ない人数で十分になります。
公務員の数を減らせるのです。
公務員にたくさんの税金を払わなくて良くなります。
公務員を削減できるのです。

サッチャーが支持された理由
サッチャーは、貧困層はもっと自己負担をするべきだと主張し、過激な改革を行いました。
なぜそんな彼女が、支持させたのでしょうか?
それは、当時の人々が、経済が成長しないことに焦っていたからです。

稼げる人から稼げば良いという考え方が浸透するようになり、貧富の格差が広がることをあまり気にしなくなったのです。
トリクルダウン理論
当時、主張されるようになったのは、トリクルダウン理論です。
これは、富ある者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り下りるというものです。
言い換えると、お金持ちがお金を稼いだら、貧しい人にも恩恵が行き渡るという考え方です。
だから、貧しくても我慢しましょう、と主張されました。

トリクルダウン理論とは、貧困層を放置して、裕福層を優遇する考え方なのです。
結果
サッチャー政権の前は、イギリスは「英国病」と呼ばれるほど経済が停滞していましたが、競争や効率を重視したことで、景気が少し持ち直しました。
しかし、この政策で、格差が拡大し、たくさんの人が失業しました。
最後に
「努力をすれば、成功する」という考え方は、半分正しいです。
しかし、「成功していないのは、努力を怠っているからだ」という考え方になってしまうと危険です。
資本主義社会では、生まれつき貧しい人は成功しづらく、生まれつき裕福な家庭の方が成功しやすいのです。
そのため、小さな政府が行き過ぎると、貧富の格差が悪化してしまいます。
サッチャー政権は、結果ばかりで物事を判断していたせいで、弱者だけど頑張ってる人まで切り捨てられるようになってしまったのです。