世界恐慌
ケインズが生きた時代は、世界恐慌と呼ばれる大不況がありました。
全員が貧しくて、たくさんの人が失業しました。

普段は、人々は、給料をもらって税金を納めています。
しかし、失業して、給料がなくなると、税金を納める量が減ります。
税金とは、国にとっては、もらうお金です。
「税収」と言います。
多くの人々が失業者になったので、国の税収が減ったのです。

そうなると、政府のお金も少なくなっていきます。
通常であれば、失業者を助けるために、政府がお金を使います。
しかし、当時は、国がお金を使おうとしても、使えるお金が少なかったです。
そのため、多くの失業者が苦しむ状況が続きました。

この状況を解決しようとアイデアを考えたのは、古典派とケインズです。
それぞれの意見を見ていきます。
古典派
古典派とは、ケインズより前の時代の人たちのことです。
ケインズは、自分より古い人たちのことを「古典派」と呼びました。
古典派は「失業者の数を減らすためには、労働者の賃金を下げるべきだ」と考えました。

例えば、労働者の賃金が1円になれば、企業は労働者を雇うはずです。
賃金が下がれば「労働者を雇いたい企業」が増えるはずなのです。
そしたら、失業率は減っていくはずです。
賃金が下がれば、失業者は減るはずなのです。

もっと給料を下げれば企業は、労働者を雇うようになり、失業者が減ってくるだろうと、古典派は考えました。
そして、賃金が下がらないのは「賃金の引き下げ反対」と言ってる労働組合があるからだと考えました。

当時は、労働組合の存在のおかげで、賃金がなかなか下がりませんでした。
古典派のピグーはこれを悪いことだと考えていました。
給料が高すぎると、たくさんの人を雇うことができないからです。
また、ピグーは、失業保険も良くないと主張しました。
失業保険よりも高い賃金を払わないと、人々が働いてくれないからです。
ピグーにとってたくさんの人が失業しているのは、労働者のわがままであり、国家への甘えです。
国家が助けてくれるから、労働者が働かなくなったのだと、主張しました。
しかし、このピグーの考え方は、現実を無視しています。
なぜなら、そもそも労働者は、社会的に弱い立場にあり、それを救うために労働組合や失業保険があるからです。
ケインズ
一方で、ケインズは、労働者の賃金を下げないで、不況を解決する方法を考えました。
古典派は、労働者の賃金を下げるべきだと考えたのに対して、ケインズは、企業がお金を持っているべきだと考えたのです。

企業にお金がなければ、賃金を払えません。
もし、企業にお金があれば、企業はお金をはらって、労働者を雇うことができます。
だから、企業にお金があればいいのです。
企業にお金がある状況を作るために、政府がお金を出すべきだと考えました。
つまり、政府がお金を出して雇用が生まれるような仕組みを作ればいいのです。

例えば、政府が水道屋さんに、水道を作って下さいとお願いします。
そして、税金で集めたお金を、政府は水道屋さんに払います。
すると、水道屋さんは、お金を手に入れるので、人を雇うことができます。
人が雇われると、失業者は労働者になります。
こうして、失業者を減らすことができるのです。

ケインズは、労働者の賃金を減らすべきではない、と考えました。
なぜなら、賃金が減った時、働こうとする人の数が増えてしまうからです。
例えば、両親の賃金が減れば、子どもたちが働きにでます。

景気が悪い時、貧乏な労働者全員がたくさん働こうとしたら、競合して、賃金が下がってしまいます。
そのため、まずは、一人ひとりが十分な賃金を得ることが大切だと、ケインズは考えました。