連邦準備制度とは
連邦準備制度とは、アメリカの中央銀行のことです。
「制度」と書いてあるので、ルールか何かの名前だと思っていました。
しかし、連邦準備制度そのものが、アメリカの中央銀行なのだそうです。
連邦準備制度理事会は金融政策の決定をしていて、地区連邦準備銀行が銀行の業務などをしていて、連邦公開市場委員会などが公開市場操作をしています。
それからを全部あわせて、「連邦準備制度」と呼ぶそうです。
連邦準備制度理事会とは
連邦準備制度理事会とは、アメリカの中央銀行の金融政策の決定を行う人たちです。

連邦準備制度理事会は、漢字がたくさんあって読みづらいので、この記事では「アメリカの中央銀行」と呼ぶことにします。
フリードマンの主張
フリードマンの主張は、アメリカの中央銀行は、みんなが思うほど、賢い人たちが働いているわけじゃなくて、けっこう判断ミスをたくさんしてるよ、ということです。

中央銀行は、景気をコントロールできるほど、天才の集まりというわけではないので
そういう人たちに生殺与奪権を握られるのは、怖いんじゃない?
ということを問いかけています。
裁量的に(その人たちの気分次第で)景気をコントロールするというシステムになってるのは、危険かもしれません。
そのため金融政策のルールを作っていこう!というのが、フリードマンの意見です。
そう考えるようになった背景について、詳しく見ていきます。
アメリカの中央銀行ができる前と後
『資本主義と自由』という本の中で、フリードマンは、連邦準備制度ができる前の1866年〜1914と、設立後の1914〜1962年を比べています。
中央銀行は、そもそも景気を安定させるために作られました。
それなのに、中央銀行ができた後の方が景気が不安定でした。
たった20年間の間に、不況が3回もあったのです。こんなことは、アメリカ史上、他にありません。

その理由の1つとしては、この期間は2回世界大戦があったからというのが挙げられます。
世界的な戦争があれば、景気が不安定になってしまうのはしょうがないことです。
しかし、戦争をしていなかった時期も、経済はとても不安定でした。
国内総生産のアップダウンが1番大きかったのが2つの世界大戦の間の時期です。
そのため、中央銀行は役に立ってない、とフリードマンは考えました。

中央銀行は、大きな影響力と権限を持っています。
そして、景気を安定させることをみんなから期待されています。
しかし、みんなが思ってるほど、中央銀行は、天才ではなくて、たくさんの判断ミスをしてきました。
20年間で3回も不況が起きたのは、中央銀行が、やるべき事はやらないのに、やらなくて良いことをやったからだとフリードマンは言います。
中央銀行が余計なことをしなければ、あんな深刻な不況にはならなかったはずだと考え、その理由について語っています。
世界恐慌を振り返る
フリードマンは、1929年の世界恐慌について振り返っています。
1929年11月に始まった株式市場の大暴落は、とても衝撃的なニュースだったため、人々はこれが不況の原因だと信じていました。
だけど、そうではないと、言います。
その後の中央銀行の対応のやり方がマズくて、景気が悪化したのだそうです。
景気が天井を打ったのは、1929年の「半ば」で暴落より数ヶ月前です。
天井を打つのが早かったのは、株の投機を防ごうとして、中央銀行が金融をかなり引き締めたからです。
金融引き締め
当時の中央銀行は、投機を防ぐために金融を引き締めました。
投機とは、運任せのギャンブルみたいなものです。
周りの意見に流されやすい人たちが「この株が人気らしいから、この株を買おう」ということで、深く考えずに株の売買をすることです。
その会社の経営状態も見ないで、「みんなが買ってるから」という理由だけで株を買う人が増えると、大変なことになります。
たいして儲かってない会社が、人気になってしまうこともあるからです。
そんな投機のせいで、不景気なる可能性もあったので、中央銀行は、投機をやめさせようとしました。
金融引き締めとは、国に出回るお金の量を減らすことです。
国民が持ってるお金の量を減らせば、投機をやるためのお金がなくなるので、投機をやめてくれるはずです。
そのため、当時の中央銀行は、景気を引き締めました。
金融引き締めで景気が悪化
しかし、その金融引き締めで景気が悪化しました。
金融を引き締めれば、世の中に出回るお金の量が減ります。
国に出回るお金の量が減ると、人々が使えるお金の量が減ります。

人々はお金を使わなくなり、お店が儲からなくなってしまいます。
ここで金融引き締めをしたのが判断ミスだった、とフリードマンは言います。
景気を引き締めなければ、景気はそこまで悪くならなかったはずなのだそうです。

景気悪化の原因は、この時の判断ミスであると、フリードマンは言います。
銀行が潰れ始める
景気が悪くなりだしたのは、1930年11月です。
銀行が次々に潰れてしまいました。
銀行が潰れると、お金が引き出せなくなると人々は感じて、自分が預けてるお金を、銀行が潰れる前に引き出そうとしました。
しかし、みんなが一斉に銀行からお金を引き出すことは、できません。
みんなが銀行に預けてるお金は、全部が銀行にあるわけじゃないからです。
銀行というのは、預かったお金をずっと持っているわけではありません。
預かったお金は、誰かに貸してしまっています。
銀行に十分にお金がないので、みんなが一斉に銀行からお金を引き出そうとしたら、銀行が潰れてしまうのです。

銀行が一個潰れると、他の銀行も、巻き込まれて潰れやすくなります。
次々と銀行が潰れると不安が広がり、銀行にお金を預けるのは危ないと人々は考え始めます。
こうして、さらに窓口に人々が殺到し、ついに大きな銀行も破綻しました。
銀行が破綻すること自体は、それほど深刻ではないのですが、それで人々が不安になって、みんなが一斉に取り付け騒ぎを起こすと問題が悪化してしまいます。
国に出回るお金が減る
人々が銀行にお金を預けるのをやめると、国に出回るお金が減ります。
その理屈を説明します。
まず、銀行は、国民から預かったお金を、誰か会社のトップの人とかに貸しています。
お金を借りた人は、そのお金を自分で持っているわけではなくて、借りたお金を自分の銀行に預けています。
銀行Aから借りたお金を、銀行Bに預けるということです。
このとき、お金が2倍になります。
実際に2倍になるのではなくて、目に見えない形で2倍になります。

このため、世の中に出回るお金は、実際に存在してるお金の量よりも膨らんでいます。
銀行に預金してる人がたくさんいる時は、実際に存在するお金の量よりも、はるかに大きな量が国に流通していることになっています。
しかし、銀行にお金を預ける人が減れば、世の中に出回るお金の量もしぼみます。

中央銀行が作られた目的
中央銀行が作られた目的は、このような混乱に対処することです。
預金を引き出そうとする動きが広まったときに、銀行が持ってるお金の量を増やしてあげて、銀行が潰れないようにしてあげことが、中央銀行の役割です。
こういう権限が中央銀行にはあります。
中央銀行が生まれてから初めて、活躍のチャンスが巡ってきたのが1930年です。
中央銀行がうまくやれるかどうか、腕の見せ所でした。
しかし、中央銀行は失敗してしまいました。
お金を増やさないといけないタイミングで、逆に減らしてしまったのです。
中央銀行は当時の不況を食い止めることはできませんでした。

不況を食い止める方法
当時、国民がみんなお金を引き出したいと取り付け騒ぎを起こしていました。
この混乱を止める方法は、銀行にお金をもっとたくさん供給してあげることです。
銀行に十分なお金を与えてやれば、銀行は潰れません。

なのに、当時の中央銀行は、むしろ銀行に供給するお金の量を減らしてしまいました。
世界恐慌が起きた3年間で、アメリカの通貨供給量は三分の一減少しました。
通貨供給量の減少は食い止めるべきだった。もしそれができていたら、不況はもっと短く、もっと穏やかだった。(フリードマン『資本主義と自由』)
そして、たった半年で、10分の1の銀行が支払い停止に追い込まれました。
人々は銀行にお金を預けなくなり、銀行の預金量は15%も減りました。
本来であれば、景気をコントロールするための場所なのに、中央銀行がなかった時代よりも、はるかに衝撃的な不況になりました。
これを見たフリードマンは、中央銀行は景気をコントロールする能力がない、と考えました。
あのときに、金融を引き締めなければ、四年間で所得が半分以下に減ったり、物価が三分の二になったりするような事態には、まずならなかったはずだ、とフリードマンは言います。
どこの国のどの時代でも、不景気の時は、国のお金の量を増やさないと、景気は改善しません。
しかし、アメリカの中央銀行は、国のお金の量を減らしてしまったため、国民がみんな一斉に貧乏になり、苦しい思いをすることになりました。
世界恐慌から学べること
フリードマン曰く、世界恐慌から学べることがあると言います。
それは、一握りの人間が一国の通貨制度に強大な権限を振るうとき、そこで判断ミスがあったら、景気がさらに悪化してしまうということです。
「失敗はしょうがない」と主張する人もいるかもしれません。
しかし、世界恐慌は、多くの人を苦しめました。
フリードマンは、これは許せるかどうかの問題ではないと言います。
ごく少数の人間にあまりに多くの権限と裁量を与え、その失敗が深刻な問題を引き起こす原因になるとしたら、それは悪い制度であると、主張しています。
一握りの人間に権力を集中させると、その人たちの気分次第で、みんなの運命が決まってしまうわけです。
また、フリードマンは、「責任を取れない人に、権力を持たせるな」と言っています。
責任を取らなくて良い判断は、無責任に適当に決めてしまって失敗するから、責任を取れない人には権利を与えてはダメだと主張しました。

ルールを作ろう
安定した通貨制度を確立するにはどうしたらいいのでしょうか。
中央銀行は、判断ミスが多いので、お任せするのは良くありません。
そのため、フリードマンは、金融政策のルールをつくって、人間の裁量ではなく、ルールに従った政策を行うべきだ言います。
そうすれば、金融政策が政治家の気まぐれに翻弄されることはなくなります。
裁量的にやるのではなくて、ルールに従ってやる方がいいのです。