貨幣の中立とは「お金を増やしても減らしても、景気に影響はない」ということ説明するための言葉です。
ケインズが「国のお金を増やせば、景気が良くなる」と言ったのに対して
フリードマンは「貨幣は中立だから、お金を増やしても、景気は良くならない」と反論しました。
詳しくみていきます。
国のお金の量は変えられる
まず、国のお金の量は変えられます。
国のお金は、中央銀行が刷っています。
たくさんのお金を刷れば、国に出回るお金の量が増えます。

国のお金の量は変えることができます。
しかし、お金の量を変えるべきか否か、で意見が分かれています。
お金の量を増やすべきだと主張したのがケインズです。
貨幣中立性を主張したのがフリードマンです。

ケインズの意見
ケインズは、国に出回るお金の量が増えたら景気が良くなると考えました。
その理由は、国に出回るお金の量が増えたら、国民みんなが、ある意味「ちょっとお金持ちになる」という状況になるからです。
手元にあるお金が増えたら、みんなハッピーです。
お金に余裕がある時は、「もっと買い物しちゃおう」という気持ちになります。
すると、お店が儲かります。
お店が儲かれば、そこで働いている人の給料が増えます。
こうして、景気が良くなっていくのです。

給料が増えたら、いつもより多く買い物します。
そしたら、周辺のお店の商品がよく売れるようになります。
商品が良く売れたら、企業は、生産を増やします。
生産を増やすには、働く人を増やす必要があります。
つまり、雇用が増えます。
こうして、景気が良くなると、ケインズは考えました。
フリードマンの意見
しかし、フリードマンは、ケインズの考え方に反対しました。
「国に出回るお金の量が増えても、景気は良くならない」と主張しました。
その理由は、お店の商品が値上がりするので、購買力は上がらないと考えたからです。

フリードマンは、国に出回るお金が増えても、実物経済には、影響がないと考えました。
実物経済とは?
消費財や投資財の生産・分配に関わる部分のことです。
「実物経済に影響がある」というのは、「買い物できる量が増えたり減ったりしてる状態」です。
買い物をできる量が増えないなら、豊かになったとは言えない、とフリードマンは考えています。
そのため、フリードマンは「貨幣は中立である」と主張しました。
貨幣の中立性とは
貨幣の中立性とは、「お金の量が増えても、長い目で見れば物の値段が変わるだけで、世の中の豊かさは変わらない」ということです。
お金がたくさんあっても、モノの値段が高くなれば、買い物できる量が変わりません。
買い物できる量が変わらないなら、豊かになっていないのです。
貨幣中立説
貨幣中立説の人は「国のお金の量を増やしても意味がない」と考えました。
その理由は、給料が上がっても、商品の値段も上がったら、買える商品の数が変わらないからです。
国内のお金の量を増やすと、給料も増えますが、物価も上がります。
国内のお金を増やしても、買える商品の数は変わりません。
貨幣中立説とは、国内のお金の量が変わっても、人は損も得もしないという考え方です。
人の給料が2倍になったとしても、お店の商品の値段も2倍になったら、みんなの人生は変わりません。
全体の物価が2倍になるだけで、私たちの生活に大きな変化はないのです。

豊かさを感じるのは、商品をたくさん買えるからです。
しかし、給料が上がっても、商品の値段も上がったら、買える商品の数が変わりません。
給料が増えるだけでは、国民は豊かにならないのです。
国のお金が増える=インフレ
国のお金が増えることと、インフレは、ほぼ同じことです。
ケインズは「インフレは経済成長だ」と考えています。
それに対して、フリードマンは、インフレになっても経済は成長しないと考えています。
フリードマンがこのように考える理由は、「買い物できる量が変わらないから」です。
だから、フリードマンは、「国のお金の量が増えると、お店のものの値段は上がるけど、景気がよくなるわけではない」と考えました。
「名目」と「実質」について
国のお金の量を増やすと、物価や給料などの「名目」の数字は増えます。
しかし、生産力や食べれるパンの数などの「実質」の数字は変わりません。

「名目」の数字は、国内のお金の量が2倍になれば、同じように2倍になります。
しかし「実質」の数字は、国内のお金の量が2倍になっても、ほぼ変化しません。
変える商品の量が変わらないのなら、給料が増えても、損も得もしないのです。

