疎外された労働とは?
はたらくことは、本来は楽しいことのはずです。
しかし、資本主義では、働くことが苦しいだけのものになっていると、マルクスは考えました。
それを「疎外された労働」と言います。

楽しさを感じなくなった理由は、労働が自分と切り離されてしまったからだ、とマルクスは考えます。
仕事は楽しいはず
本来は、仕事は楽しいもののはずです。
自分でアイデアを考えて、周りの人からは「スゴイ」と言われ、自分の才能をさらに磨いていくことができるのが、仕事というものです。
仕事は、自分にしかできないスキルを磨く場所でもあります。
その自分だけスキルで人の役に立つことで、お金を稼ぐのです。

それに、他人の役に立てば、自然と周りから尊敬されます。
そのような生活をしていれば、他人に承認されてる感覚もあります。

働いて、誰かの役に立つことで、人との繋がりを感じるのです。
つまらない労働
マルクスは、資本主義のもとでの労働は、つまらなくなると考えました。
機械化
まず、機械化をすると、仕事は単純作業になります。
毎日ずっとネジを1本だけしめ続けるだけ…
毎日ずっと同じボタンを押すだけ…
こんな同じ作業の繰り返しをしていると、まるで機械の一部のような気持ちになってしまいます。
それに、機械化のボタンを押すだけなら誰にでもできます。
ほめられることもないし、自分の特技を活かした働き方はできません。
誰にでもできる仕事は「自分がみんなの役に立ってる」という感覚が得られないのです。

分業
また、仕事が分業されると、自分が作ってるものが何に使われているのか分かりづらくなります。
商品の全体像を知らないまま、言われた作業だけを、毎日くり返すのです。
自分で工夫することもできないし、自分で何かを決めることもできません。
作ったものも自分のものじゃないので、がんばっても達成感がありません。

利益のためだけの働き方
また、資本主義では、人々は利益のためだけに働きます。
会社が儲かっても、労働者がもらえる給料は少しだけです。
労働者が過労で倒れたとしても、クビになるだけです。
そのため、労働者は、自分のことだけを考えて生活せざるを得なくなります。
仲間を思いやる余裕もなくなり、働く中で人間性がなくなります。
人との繋がりを大事にできない環境だから、生きがいが、給料をもらうことだけになっていきます。
これは、給料のためだけに働いている状態です。

本来は、働くことは「自分の力で何かを作ること」であり、楽しいものです。
しかし、資本主義のもとでの機械化は、仕事をつまらなくします。
労働者は「自分で働いているのに、自分の人生の一部を、どこかに持っていかれている」ような感覚になるのです。
これをマルクスは「疎外された労働」と呼びました。
これが 疎外された労働 です。
疎外は「4つの形」で起きる
マルクスは、疎外は次の4つで起きると考えました。
① 作ったものからの疎外
- 自分が作った商品なのに、すぐ会社のものになる
- 自分の手から離れてしまう
② 働くことそのものからの疎外
- 働くことが「生きるための手段」だけになる
- 楽しさや誇りがなくなる
③ 自分らしさからの疎外
- 人は本来、考え、工夫し、成長する存在
- でも単純作業ばかりで、それができなくなる
④ 人と人との関係からの疎外
- 仲間が「助け合う相手」ではなく
- 「ライバル」「競争相手」になる
機械化が悪いのか?
労働がつまらないのは、機械化したことが原因ではないと、マルクスは考えます。
機械化そのものは、人を楽にする技術です。
しかし、資本主義のもとでの機械化は、人を部品のように使う道具になりやすいのです。

マルクスは、資本主義のものでの機械化を危険だと考えました。
なぜ資本主義は、労働をつまらなくするのか?
資本主義のもとで機械化すると、労働がつまらなくなる理由は、機械が利益の追求のためだけに使われるからです。
・できるだけ早く
・できるだけ正確に
・同じ作業の繰り返し
その結果、労働者の仕事は、考えなくていい作業になってしまうのです。
もし機械が
- 労働時間を短くし
- 体の負担を減らし
- 創造的な仕事に時間を使える
ために使われるなら、OKだとマルクスは考えています。
問題は機械そのものではなく、機械の使い方 なのです。
資本主義における機械化
機械化された単純作業は
- 作るよろこびがなくなる
- 自分の仕事に誇りを持てなくなる
- 人が「生きた人」ではなく「作業装置」になる
この状態こそが、疎外された労働 です。
労働がつまらなくなったのは、機械が入ったからではなく、機械が「人のため」ではなく「儲けのため」に使われるようになったからだ、とマルクスは考えました。

