景気には波がある
景気には、波があります。
景気がいい時もあれば、悪い時もあります。
しかし、景気の波が大きいと大変です。
アップ・ダウンが激しいと、経済が混乱してしまいます。
そのため、景気を安定させることが大切です。
景気を安定させるには、どうしたらいいのか？
というのが、経済学の一つのテーマです。
しかし、そもそも、景気はコントロールできるのでしょうか？
「政府は景気をコントロールできる」と考えている人もいれば、
「景気はコントロールできない」と考えている人もいます。
「政府が景気をコントロールするべきだ」と主張したのはケインズです。
これは、裁量的財政政策と呼ばれています。
一方で、「それはムリだ」と主張したのがフリードマンです。
この記事では、フリードマンが裁量的財政政策に反対した理由を見ていきます。
裁量的財政政策
まず、「財政政策」というのは、景気を安定させるために、政府がいろいろと頑張ることです。
「裁量的」というのは、「自分の考えで物事を判断すること」です。
「そのときの様子を見て、選ぶ」という意味です。
「裁量的財政政策」というは、政府の人が、「これが景気を良くするだろう」と考えて、いろいろと頑張ることです。
国が、そのときの景気のようすを見て、
「今はお金を使おう！」とか「今はがまんしよう！」と決めて動く政策のことです。
財政政策の具体的な内容を紹介します。
まず、景気が悪いときは、公共事業を増やします。
そうすることで、働く場所が増えて、失業者を減らすことができます。
また、減税をします。
消費税が低くなれば、買い物をする時に、商品が安く買えるようになるので、買い物をする人を増やすことができます。
そして、十分に景気が良くなったら、公共事業をやめます。
さらに、増税をします。
増税すると、買い物をする時により多くのお金を払う必要があります。
そのため、人々は買い物をするのをやめます。
このように、財政政策を臨機応変にすることを「裁量的財政政策」と言います。
しかし、これは、うまくいくのでしょうか？
フリードマンは、うまくいかないと考えました。
裁量的財政政策がうまくいかない理由
フリードマンは、裁量的財政政策がうまくいかない理由をいくつか挙げました。
やりすぎる
裁量的財政政策がうまくいかない理由の一つ目は、不景気になると、政府はビビってしまうからです。
景気後退が起きるたびにそれがどんなに小幅の後退でも、小心な政治家や役人は震え上がる。大恐慌の再来の前兆ではないかという恐怖が頭をよぎるからだ。
フリードマン『資本主義と自由』
景気が悪くなると、政府の人は「なんとかしなければヤバい」と焦ってしまいます。
そして、「景気をコントロールするために公共事業を増やそう」と考えます。
しかし、そこで公共事業を計画しても、計画を進めるのは時間がかかります。
時間がかかる
大きな建物を建てるためには、たくさんのお金と、たくさんの労働者が必要です。
予算を立てたり、人を雇う必要があります。
大規模な建設には、時間がかかります。
裁量的財政政策がうまくいかない理由の二つ目は、公共事業は、計画を立ててから実行するまでに時間がかかることです。
公共事業を計画しても、それを実施するまでに何年もかかります。
実施される頃には、景気はすでに良くなっているかもしれません。
景気が良くなってるタイミングで、公共事業が増えてしまうと、さらに景気が過熱してしまいます。
公共事業の計画を作ってるうちに、景気が良くなっちゃったから、その計画は要らなくなってしまった、ということもありえるかもしれません。
景気が良くなったからと言って、立てた計画をやめるのは難しいです。
建物を作りかけで放置するわけにはいかないからです。
公共事業は、始めるまでに時間がかかりますし、完成するまでは、やめることが出来ません。
政府が景気を見てから予算を決め、実際にお金を使うまでに時間がかかります。
その間に景気が変わってしまって、むしろ逆効果になることも多いと、フリードマンは考えました。
増税時は国民からの反発がある
減税する時は、国民みんなから賛成されます。
一方で、増税する時は、多くの人から反対されます。
裁量的財政政策では「景気が良くなれば増税するべきだ」と言われています。
しかし、実際には、「景気が良くなったから増税します」と政治家がいうと、国民から反発されてしまいます。
裁量的財政政策がうまくいかない理由の三つ目は、増税時は国民からの反発があるからです。
不景気の時に、景気を良くするための政策は国民から応援されます。
一方で、景気が良くなった後に、増税をしようとすると反発されてしまいます。
増税したり、公共事業を減らすことで、「景気の回復を邪魔した」と言われてしまうかもしれません。
このような事実があり、アメリカではインフレが悪化した、とフリードマンは考えています。
フリードマンの意見
裁量的財政政策をしても、その効果が現れるのは後になってからです。
そのため、変動をかなり以前から予測しなければいけません。
しかし、それを予測する力は誰にもありません。
そのため、裁量的(当てずっぽう)にやってもうまくいかない、とフリードマンは考えました。
フリードマンは、「こうすれば、景気が良くなる」というものは存在しない、と主張しました。
景気を微妙することはできないのです。
だから、政府は、運転手のようにいろいろ操作するのではなくて、車の後部座席に座ればいいとフリードマンは言いました。
