ピケティが量的緩和が日本では意味がないと考えた理由

ピケティ

日本は、景気を回復させるために、量的緩和をしてきました。

しかし、ピケティは、量的緩和は日本では意味がないと考えました

その理由を見ていきます。

日本の貧富の格差の問題について

アメリカにおいては、トップ1%とそれ以外の人の間に貧富の格差が生まれています。

しかし、日本では違います。

日本の場合は、正社員と非正社員の間で、貧富の格差が起きています。

正社員の平均の時給は1937円です。

一方で、非正社員は、1229円です。

非正社員の時給は、正規労働者の約半分なのです。

年間の平均給与は、男性511万円。女性272万円です。

正社員473万円、非正社員168万円です。

日本は、正社員が減っていて、非正社員は増えています。

また、非正社員が増えると、平均賃金は下がります。

最近は、非正社員が増え続けています。

日本でも、貧しい人が増えているのです。

そこで安倍政府は「量的緩和」という方法で、日本の景気を良くしようとしてきました。

量的緩和で景気が良くなる仕組み

まず、量的緩和で景気が良くなる仕組みについてです。

量的緩和とは、銀行から企業にお金を供給しようとするものです。

企業は、お金が手に入ったら、そのお金を使って買い物(投資)をするはずです。

このようにお金が流れれば、儲かるお店が増えます。

だから、量的緩和をすると、景気が良くなると考えられているのです。

日本の現状

しかし、日本の特殊な点は、企業が貯金をすごくしているということです。

お金はあるけど、企業は、買い物(投資)をしないのです。

ピケティの意見

日本の景気が深刻な理由は、企業がお金を持っているのに、そのお金を使わない点です。

量的緩和とは、企業にお金を供給しようとする物です。

これは、企業が持ってるお金を使う時に効果があります。

しかし、企業は、お金を持っていても、買い物(投資)をしません

もともとお金を持ってる企業に、さらにお金を供給しても、あまり意味がないのです。

量的緩和で景気が良くならなかった理由

日本は、量的緩和をしても、景気を良くすることができませんでした。

その理由は、日本の企業は、お金がないわけではなかったからです。

もし、日本の企業がお金を持っていないのであれば、量的緩和は効果があります。

しかし、日本の企業は、お金がないわけではありませんでした。

銀行がお金を貸してくれたとしても、それは企業にとってのメリットにならなかったのです。

例えば、新しいロボットを買うことを「投資」と言います。

しかし、新しいロボットを買うには、お金が必要です。

新しいロボットを買って、よりたくさんの商品を作れるようになれば、企業にとって、そのロボットを買う価値があります。

ところが、今の日本は、不景気です。

商品をたくさん作れるようになったとしても、お客さんが少ないのです。

そういう事情があるので、企業は、買い物(投資)をする気分になれないのです。

日本企業は、内部留保が多い

内部留保とは、企業が自分で持ってるお金です。

企業は、儲かったら、それを働いてくれた人の給料にします。

儲かったお金のうち、7割くらいを労働者に分配すると言われています。

また、企業は、儲かったお金を、働いてくれた人だけでなく、株主に配ります。

株を買ってくれた人に、「ありがとう」ということで、お金をあげるのです。

しかし、日本は、儲かったお金をあまり株主に配りません。

日本の株主資本率は、アメリカの3分の1程度なのです。

最近の日本は、お金を分配するのではなく、ただ溜め込んでいます。

日本の企業は、内部留保が多いのです。

日本企業は、銀行からお金を借りません。

普通は、企業は、銀行からお金を借りて投資するための組織なので、お金を借りないのは異常事態なのです。

もう一つの問題点

日本には、もう一つの問題点があります。

それは、工場が海外に建てられている点です。

例えば、車の会社は日本にありますが、その工場が海外にあります。

なぜなら、東南アジアなどは、日本より人件費が安いからです。

日本は、商品を海外から輸入しています。

今の日本は、モノをたくさん「輸入」して、経済が成り立っています。

日本は、モノを輸出しているのではなく、輸入しているのです。

円安のピンチ

日本は、円安になってしまって、ピンチです。

なぜでしょうか?

ここで、円安と円高について復習します。

円安とは、「輸出に強い」状態です。

一方で、円高とは、「輸入に強い」状態です。

今の日本は、円安です。

つまり、輸出品が儲かる状態です。

私が子どもの頃は、日本といえば「車を輸出する国」でした。

「円安になり、車をもっと輸出すれば、日本の景気が良くなる」と言われてきました。

しかし、現在では、日本の工場は、海外にあります。

つまり、海外から商品を輸入しています。

だから、円安だとマズイのです。

日本は、いま貿易赤字になっています。

日本の貿易赤字の原因は、日本が輸入をたくさんしてる国なのに、円安だからです。

円安の時は、輸入するほどに、損をするのです。

アベノミクス

アベノミクスでは、量的緩和で円安にしようとしていました。

まず、どうして、量的緩和をすると、円安になるのでしょうか?

それは、量的緩和とは、国内のお金の量を増やすことだからです。

お金の量が増えれば、1円の価値が下がります。

1円の価値が下がるということは、円安になるということです。

アベノミクスでは、円安を意図的に作ったのです。

しかし、円安にして景気を良くしようとした「アベノミクス」は、貿易赤字を増やして失敗してしまいました。

昔の日本は、車を国内で作って海外に売っていたので、円安の方が景気が良くなると考えられていたのです。

しかし、現在では、工場は海外にあるので、円安で貿易赤字になってしまったのです。

貿易赤字の理由

貿易赤字の理由は、もう一つあります。

それは、震災後に原発を止めたために、LNG(液化天然ガス)の輸入が激増したことです。

これによって増えた毎年三兆円以上の輸入代金は産油国に払われるようになりました。

「円安は、輸入に不利」なので、エネルギーを輸入するのは、苦しいことなのです。

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