古典派は「貯蓄=投資」にならなければいけないと考えていました。
これは、貯蓄と投資の「意味が同じ」ということではありません。
貯蓄と投資の「量が同じになる」ということです。
なぜ、そのように考えていたのでしょうか?
詳しく見ていきます。
銀行の仕事
銀行の仕事は、お金を預かったり、預かったお金を誰かに貸したりすることです。

お金を銀行に預けることを「貯蓄」と呼びます。
また、銀行からお金を借りる人は、借りたお金を使って、設備投資をします。
投資をするためにお金を借りるので「借りる=投資」と考えていきます。
貯蓄を増やす
まず、銀行は、一番最初は、お金を持ってない状態からスタートします。
銀行にお金がないので、お金を集めるために、人々に貯蓄してもらいたいです。

貯蓄というのは、買い物を我慢して、お金を銀行口座に預けることです。
「普通の人は、給料を全部、買い物に使いたいと考える」と古典派は信じています。
何かメリットがないと、銀行に貯蓄しないのです。
じゃあ、国民に「貯蓄したい」と思わせるには、どうすればいいのでしょうか。
金利を上げる
みんなが貯金をしてくれるようにするために、古典派は、銀行の金利(利子率)を上げることが大事だと考えました。

金利とは、銀行の利子の大きさ(利子率)のことです。
みなさんが銀行にお金を預ければ、お金が増えます。
金利が高い時は、お金がどんどん増えます。
そしたら、嬉しくて、たくさんの人が銀行にお金を預けるはずです。
つまり、金利が上がれば、銀行に貯蓄する人が増えるはずです。
一方で、金利が下がれば、銀行に貯蓄する人は減ります。
ちなみに、金利はそれぞれの銀行が、自由に決めています。
金利が高いとき | 金利が低いとき |
銀行に貯蓄する人が増える | 銀行に貯蓄する人が減る |
貯蓄されたお金
金利が上がると、貯蓄する人が増えます。
銀行に、お金が集まってきます。
銀行がお金でジャブジャブ溢れるような状態になります。
銀行に預けられたお金は、誰かに貸されて、設備投資の資金になります。
銀行は、お金を貸して、利子で儲けています。
銀行にお金がたくさんある時は、誰かに貸したいです。

銀行に、お金がたくさんあるときは、銀行は人々にお金を貸したいと考えます。
「銀行からお金を借りて投資するのはいかがですか?」と、会社のトップの人たちに声をかけます。
投資を増やす
投資を増やすには、どうすればいいでしょうか?
銀行からお金を借りるのはちょっと怖いです。
なぜなら、お金を借りたら増やして返さないといけないからです。
増えるお金のことを金利といいます。
金利が高い時はお金を借りたくありません。
金利が低い時にお金を借りたいです。

金利が下がると、投資が増えます。
金利が高いとき | 金利が低いとき |
設備投資する人が減る | 設備投資する人が増える |
「貯蓄=投資」
「貯蓄=投資」という言葉の意味について解説します。
銀行は、お金を預けてもらったり、人に貸したりしています。
銀行に貯蓄をする人が多い時は、銀行のお金が余るようになります。
そしたら銀行は、お金を他人に貸す余裕が出てきます。
なので、金利を下げて投資が増えるように、誘導します。
貯蓄の量と、投資の量が同じになるように、銀行が誘導しているということです。
金利を上げたり下げたりすることで、貯蓄と投資の量が同じになるように、銀行がコントロールしているのです。
図を見てみる
次に、「貯蓄=投資」の図を見ていきます。

↑この図の見方を紹介します。
貯蓄
貯蓄とは、銀行にお金を預けることです。
人はなぜ貯蓄をするのでしょうか?
それは、銀行にお金を預けると、お金が増えるからです。
どれくらいのスピードでお金が増えるのかを表す数字のことを「利子率」と言います。
利子率が高いときは、お金が早く増えます。
利子率が低いときは、お金がゆっくり増えます。
そのため、貯蓄をする人にとって、利子率は高い方が嬉しいです。
それをグラフで見てみます。
まず、利子率が低いときは、貯蓄したい人は少ないです。

利子率が低いと、貯蓄をしてもなかなかお金は増えません。
一方で、利子率が高いと、貯蓄をしたい人が増えます。

利子率が高いときは、貯蓄したい人は多いです。
投資
次に、投資についてです。
ここでの投資とは「設備投資」のことです。
例えば、パン屋さんがオーブンを買ったりして、お店を大きくするとします。
それには、お金が必要です。
銀行からお金を借ります。
しかし、利子率が高いときにお金を借りてしまうと大変です。
たくさんお金を増やして返す必要があるからです。
利子率が高いときは、設備投資をする人は減ります。

利子率が高いときは、設備投資をしたい人は少ないです。
一方で、利子率が低いときは、設備投資をしたい人が増えます。

利子率が低いと、銀行からおトクにお金を借りれるので、お金を借りる人が増えます。
これらを組み合わせると、↓このような図になります。

貯蓄と投資のバランスが取れるところで、利子率が決まります。
万が一、貯蓄する人が多すぎる場合は、利子率が高すぎるのです。
また、投資する人が多すぎる場合は、利子率が低すぎるのです。
古典派の金利の考え方
古典派は「貯蓄=投資」だと考えています。
また、利子率は、貯蓄と投資のバランスで決まると考えています。
貯蓄する人が多すぎて、投資をする人が少なすぎる場合は、金利を下げるべきで、
また、貯蓄する人が少なくて、投資をする人が多すぎる場合は、金利を上げるべきだと、考えました。
このように、貯蓄と投資の量がちょうど一致するところで利子率が決まると、古典派は主張しました。
ケインズの反論
古典派は、貯金と投資の量は、同じになるべきだと考えていました。
しかし、ケインズは、現実はそのようにはいかないと主張しました。
不況になって、みんなが不安な状態の時は、貯金をする人が増えて投資をする人は減るからです。

今の日本もそうですが、銀行が金利を下げまくっても、貯金をする人は貯金をするし、なかなか投資をする人が現れません。
このように、「貯蓄=投資」というのは、実際には起こらないとケインズは考えました。